第33回長野県作業療法学術大会閉会にあたって

第33回長野県作業療法学術大会 大会長 松井 典子

 平成29年3月4日、5日に行われました第33回長野県作業療法学術大会では、特別展示として、長野県作業療法士会と日本の作業療法の歴史年表と、日本や長野県の作業療法の先駆けとなる先輩方から、後輩作業療法士に向けてのメッセージを展示いたしました。この時のメッセージを、大会に参加されなかった皆さんにもお届けします。ぜひご覧ください。

先輩作業療法士からのメッセージ

     

特別講演・市民公開講演

 私の作業療法士人生と現役・若者作業療法士への提言

元 信州大学医学部保健学科教授 佐藤 陽子 氏 

 私が卒業した国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院(通称清瀬リハ)は、1963年に日本で最初に開設された理学療法士・作業療法士の教育養成施設でした。1967年、私は清瀬リハの5期生として入学し、欧米教師の英語の授業に戸惑いと不安と英語が良く理解できない焦りとで、苦しみながらもインターン実習を経て無事卒業しましたが、5期生は総勢15名という非常に少ない作業療法士の誕生でした。それは大阪万博が開催された1970年のことでした。あれから46年が経過し、その間、作業療法に強い影響を及ぼす医療・福祉の制度は大きく変貌し、今、まさに作業療法あるいは作業療法士のあり方が強く問われるような時代を迎えようとしています。

 今回、松井学術大会長ならびに近藤実行委員長のたっての依頼に、もう現役を退いた私の話しなど聞きたい人はおりませんと当初は固辞致しましたが、「今まで歩んできた作業療法士人生をそのままお話ししてください」と真摯に迫ってくるお二人の迫力に負けて、お引き受けすることになった次第です。特別な作業療法士人生ではありませんが、私の経験が少しでも皆様のお役に立つことがあれば、また、作業療法のあけぼの期に関わってきたひとりの作業療法士の責任においてお話しできればと思います。

 まず始めに臨床家として悪戦苦闘した最も忘れがたい、苦労の多かった10年間の経験、次に臨床を実践しながら作業療法教育の教員としての約30 年間の経験、3つ目は、作業療法士として要請のままに関わってきた福祉領域を中心とする社会活動の経験、そして最後に日本作業療法士協会の部員や委員、あるいは長野県作業療法士会の理事としての経験、この4点についてお話し、後輩作業療法士やこれから目指そうと考えている若者たちに少しでも作業療法の魅力を伝えられたらと願ってお話ししたいと思います。

分科会

分科会1 終末期作業療法(アクティーホール)

人生を生ききるための作業療法

新生病続リハビリテーション部 メディカルリハビリテーション課 主任
塚田 緑 氏
司会 中澤 真由美 (長野中央病院)

 新生病院は、近年地域に根ざす病院を目指しており事業の拡大を行っています。訪問診療にて在宅、ケアホームなどから入院されるケースが増えています。そして、一般病棟に入院される患者様は高齢化・重症化しています。療養病棟でも今まで以上にそういった現象が見られています。

 現在、終末期の作業療法はどの病棟においても取り組まれています。つい先日も、最期まで作業に生きがいをもち、再度取り組めることを願いながら旅立たれた方を担当させていただき、経験したことをもとに「生きることを支援する作業療法J について考えてみたいと思います。

 また、当院は緩和ケア病棟を20床有します。数人ですがリハビリとして作業療法を実施され、最期を迎えられた方々との経験を紹介させていただきます。

 

分科会2 精神科作業療法(12D会議室)

精神分野における困難事例の退院支援とプロ意識

こころの医療センター駒ケ根 主任 作業療法士
荒井 留美子 氏
司会 金井 香陽子 (北信総合病院)

 近年、精神科で見られる疾患・病状は様子を変え複雑化しています。その中でも困難事例と言われる患者さんは統合失調症だけでなく複数の障害や問題行為を抱えている場合が多くあります。困難事例への関わりの中では職員の陰性感情や疲弊が誘発されることが多く離職やバーンアウトにつながる恐れもあります。

 患者さんの問題行為が治まらない職員側の要因として、患者さんの問題行為だけに注意が注がれ、その患者さんをコントロールしようとすることがあります。陰性感情のぶつけ合いや倫理的にも問題であるような対応・接遇を見かけることも多々あります。このようなことにならないためにもプロとしての意識やチーム連携は重要だと考えます。

 当日は、私が今まさに経験している困難事例の退院支援について紹介しながら、併せて、治療にも影響する医療従事者としての接遇、孤立しないチーム連携の展開などを皆さんと一緒に考えたいと思います。

 

分科会3 小児期作業療法(12B会議室)

小児分野において作業療法士としてできること ~地域、教育への関わりを含めて~

信濃医療福祉センター 療育コーディネーター
岡本 武己 氏
司会 羽生田 百合子 (北信総合病院)

 小児のリハビリテーションには、療育という言葉があります。これは障がいをもつ子どもたちに対して「医療J と「教育」の両方が必要で、あることを最初に提言された「肢体不自由児の父」とも呼ばれる高木憲次先生がつくられた言葉であり思想です。過去において療育の対象は肢体不自由児が中心で、した。しかし、医療の進歩と社会の変化によって療育の対象児も変化し多様化してきました。現在、地域で受ける相談のほとんどが自閉スペクトラム症、注意欠如/多動症、等の発達障害と呼ばれる子どもたちと反応性愛着障害の子どもです。彼らはいろいろなことができます。状況によっては全く問題ないことも多いのです。しかし、発達障害への支援に力を注いでいるのは理解不足からくる二次的な障害に陥るケースが多いからと考えられます。まさに医療と教育の二人三脚が必要とされています。さて、私たちは何ができるのでしょうか?

 

分科会4 老年期作業療法(12A会議室)

認知症における作業療法士の関わり ~認知症初期集中支援チームを通して~

栗田病院 リハビリテーション科
傳田 拓男 氏
司会 吉原 重弘 (北アルプス医療センターあづみ病院)

 平成28年度より認知症初期集中支援チームのチーム員の緩和の中で、作業療法士は必須人員ではなくなりました。しかし、チームの中での作業療法士の役割は大きいのではないかと感じています。平成30年までに各市町村に配置するという国の方針の中で、すでに参画している方、これから参画する方それぞれいると思います。  長野市において、チーム員会議は1 ケース当たり15分〜30分程度で方向性を決めていく必要があり、その中での発言は、対象者個人に焦点をあてたり、環境を含めて生活全体をみたりしなければならないものもあります。訪問は他職種と一緒に行きますが、一緒に訪問するメンバーにより医療的な視点、福祉的な視点、など多角的な観点から対象者を見ていく必要があります。実際のケースを通じて作業療法士として認知症の方や、その家族への関わり方などを一緒に考えていきたいと思います。

一般演題

第1日目 3月4日(土)

口述演題1(15:30~16:30) 会場:アクティーホール

座長:柳沢 あずさ(長野松代総合病院)

01.脳梗塞片麻痺患者の握力低下に対して機能的電気刺激を併用した活動時の即時効果の検証

伊那中央病院 桑澤 貴

02.デュピュイトラン拘縮に対してコラーゲン分解酵素注射後のスプリント療法の試み

北アルプス医療センター あづみ病院 松本 直也

03.手の浮腫測定法のリングゲージ法と掌囲法の反応性の検討

~橈骨遠位端骨折術後の浮腫に対して~

相澤病院 櫻井 利康

04.2回の反復経頭蓋磁気刺激治療と集中的作業療法の累積効果と著しい改善の見られた1事例

鹿教湯三才山リハビリテーションセンター鹿教湯病院 坂口 辰伸

ポスター演題1(15:30~16:30) 会場:JA長野県ビル12B会議室

座長:田中 佐千恵(信州大学医学部保健学科)

P01.神経性無食欲症に対する作業療法とチームアプローチ

長野市民病院 池田 さゆり

P02.自閉症スペクトラム障害を伴う統合失調症患者に対する精神科作業療法

千曲荘病院 竹原 亜弥子

P03.福祉就労から一般就労への移行支援における判断基準の検討 ~箱作り法を用いて~

長野県立こころの医療センター駒ヶ根 稲垣 佑輔

第2日目 3月5日(日)

口述演題2(9:30~10:20) 会場:アクティーホール

座長:三村 博子(介護老人保健施設 すめらぎ)

05.短期入所生活介護利用者の個別機能訓練導入後の変化

特別養護老人ホームさくらの里 岡村 駿佑

06.訪問リハビリテーションにおけるサービス向上のための重点課題の検討

~顧客満足度分析(CS分析)を用いた満足度調査~

相澤病院 訪問リハビリテーションセンター 安藤 道彦

07.小児がん患者に対するチームアプローチの有用性

長野県立こども病院 田中 樂

口述演題3(10:30~11:30) 会場:アクティーホール

座長:渡邊 泰子(山田記念朝日病院)

08.10年継続してきた水彩画をもう一度描きたい ~作業を通して自己効力感を再獲得した事例~

長野中央病院 町田 沙央里

09.両側性片麻痺に対し,トイレ動作の介助量軽減を目的に両手支持の獲得を図った1症例

丸の内病院 高山 絢夫

10.移乗動作の介助量軽減を目指して ~非麻痺側での探索活動を通して~

新生病院 髙坂 光彰

11.重度上肢麻痺を呈した急性期脳卒中患者に対する複合的な上肢機能訓練の試み

長野松代総合病院 小渕 浩平

ポスター演題2(9:30~10:20) 会場:JA長野県ビル12B会議室

座長:中村 章子(飯綱町立飯綱病院)

P04.ネオプレンの尺側偏位矯正スプリントによる手の使用頻度増加と装具の継続的使用

輝山会記念病院 坂野 建太

P05.「包丁をうまく使えるようになりたい」

~短対立装具にて調理動作の満足度が向上した一例~

北アルプス医療センター あづみ病院 土橋 侑希

P06.木曽シニア大学参加者の生活行為の不自由感と興味・関心に関する調査研究

長野保健医療大学 春原 るみ

ポスター演題3(10:30~11:20) 会場:JA長野県ビル12B会議室

座長:古城 ちさと(山田記念朝日病院)

P07.クリニカル・クラークシップによる臨床実習指導の経験

輝山会記念病院 熊谷 純久

P08.回復期リハビリテーション病棟入院患者における疾患別のBPSDの特徴とADLおよび入院期間との関連性について

安曇野赤十字病院 鈴木 章仁

P09.1枚の写真が意欲的な作業療法参加へのきっかけとなった事例

~トイレ動作の改善から在宅復帰へ~

飯山赤十字病院 勝山 友紀